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    「うん、もうさつき帰つたよ」

    「永いこつてすよ」――そのきつぱりとし、そのためにかへつて本当の永さを、あのつきることのない、何かしらにみちた前方の日々を現しているその云ひ方が、ひどく房一の頭に残つていた。

    房一は思はず笑ひ出した。

    「お噂はうけたまはつています」

    「何だらう?」

    「もう、だいぶようなつたですわ」

    「何しろ、わや苦茶だ」

    「ジョン、降りろ」

    「坑には入つてみたんかね。あすこはもう何年も入つた人がないちふことだが」

    「神尾司令官閣下と同列なんだよ。宇品から東京駅着。それから直ちに参内上奏されたんだよ。どうも、すばらしいね。目に見えるやうだね」

    さう云ふ房一の前に立つて、徳次は子供が手いたづらをするのとそつくりな様子で傍にひよろ長く生えていた草を片手でむしりとり、口にくはへた。さつきはじめて傍へ近よつたときのやうに、彼の顔は又紅らみどこか力んでいる表情を浮かべながら、口のあたりをもごもごさせた。

    「おーい、火事はどこい行つたあ」こんな風に、口々に喚いていた。

    神経質な目ばたきをしながら、練吉は口早に引きとつて云つた。

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